TAMARU MIYUKI.COM

「愛される所作~紅色の会」
(2019年度第12回)

日時
2020年3月25日(水曜日)午後2時5分~3時
場所
京都イオリカフェ名古屋名鉄店
(名古屋市中村区名駅1-2-1名鉄百貨店本店本館9階)
特別講師
笹屋伊織十代目女将・田丸みゆきさん
テーマ
菓銘あそび(菓銘を聴いて京菓子を楽しむ)
今月のお菓子
「春らんまん」(きんとん製)

笹屋伊織十代目女将の田丸みゆき先生が講師を務める女将塾の2019年度第12回「愛される所作~紅色の会」は、新型コロナウイルスによる感染症が広がっているという状況下での開講のため受講者が少なかったので、いつものバンケットルームではなく京都イオリカフェ名古屋名鉄店で行われた。常時換気、席と席の間隔をあける、アルコール消毒液の設置、講義時間の短縮などの感染症対策を施した上で開講された笹屋伊織の女将塾、実は、「女将塾」という呼称での開講はこの回が最後となる。2020年4月からの新年度のセミナーの呼称は、笹屋伊織「女将のおもてなし講座」へと変わる。

京都イオリカフェ名古屋名鉄店内でのセミナーの開講というと、田丸みゆき先生によるセミナーが始まった10年ほど前を思い出す。次の写真は、2010年10月12日に行われた「老舗女将のトークライブ」(テーマ:年中行事とお菓子の関係)と同年11月9日の「老舗女将のトークライブ」(テーマ:昔と今のお菓子屋さんの違い)で撮った田丸みゆき先生。

さて、「京菓子は五感の芸術」と言われることがある。「五感」とは、視覚、嗅覚、触覚、味覚および聴覚のことで、視覚(視る)で色や形を楽しむ、嗅覚(嗅ぐ)で香りを楽しむ、触覚(触る、触れる)で歯ざわり、舌ざわりを楽しむ、味覚(味わう)で味を楽しむに加えて、京菓子は聴覚(聴く)で楽しむことができるそうだ。言い換えると、「菓銘」を聞いて楽しむことができるのが京菓子。

ここで、田丸みゆき先生は薯蕷饅頭(上用饅頭とも)の写真を取り出し、「この薯蕷饅頭は、鶴それとも兎、どっちに見える?」と受講者に問いかけた。正解は「鶴」、しかし菓銘は「鶴」ではなく「寿ぎ」。「寿ぎ」は、「言祝ぎ」とも書くことからわかるようにお祝いの言葉。そして松竹梅と鶴亀は、古くより伝わる寿ぎの文様。したがい、「寿ぎ」という菓銘を聴いて寿ぎ文様の一つである鶴を連想できれば、その薯蕷饅頭が鶴を意匠しているのがわかる。京菓子にとって菓銘は、連想ゲームのキーワードと例えることができる重要なものだ。したがい、京菓子職人は、餡炊きなどの技術を磨くことだけでなく、菓銘のつけ様などにセンスが求められる。

「菓銘あそび-菓銘を聴いて京菓子を楽しむ」のレクチャーが終わると、お菓子と抹茶を楽しむ甘楽茶楽タイム。女将塾最終回に田丸みゆき先生が取り上げたお菓子は菓銘「春らんまん」(きんとん製)。

text:渡邉 和彦